FLYING DISC 第5章
新ゴング編
GONG NOW
SHAPESHIFTER/GONG(1992)
(CELLULOID 66914-2)
’90年代になって、アレンは再度活動を開始した。そして待望のGONGとしての
新作が発表された。クラシック・ゴングまたはオリジナル・ゴングと呼ばれる、
あの’70年代初期の黄金期のゴングとは時代も隔たり、テクノジーも進化し、
薬も抜けて(?)、メンバーも異なるので、まるきりあのゴングではないが、
アレンがゴングを名乗る以上、正真正銘のゴングであるのだ。
サウンド的には残念なことに、クラシック・ゴングの代名詞とも言える、ジリ・
スマイスのスペースウィスパー、スティーブ・ヒレッジのスネイク・ギター、
ティム・ブレイクのクリスタル・シンセがない。ゴングの必需品としてディデ
ィエ・マレエブはもちろん参加している他、ドラムにはオリジナル・メンバーで
あり、また、このところツアー等への参加が多かったピプ・パイルが再び叩いている。
その他の参加メンバーはプラネット・ゴング、ゴングメゾンなどの
歴代参加者で構成されており、音的にもゴングメゾンに近いと思える。
しかし’90年代はこれでいいのかも知れない。
オリジナル・ゴングから様々なゴングを経てここに到達したのだ。
妙に覚めたクールさと、カッチリさで旨く新しいゴングの音を構築している。
何やらこのアルバム、コンセプトの方も’90年代版 "Radio Gnome Imvisible"
とも言える、ストーリー性を持ったものになっている。現在解読中であるが、
XEROX MANDELBRATという時空を超えた存在の人物に関する物語をベースにしてい
るようで、これに関する本もあるとのことらしいが、"Radio Gnome Imvisible"
ほど全体のアルバムを支配はしていないようである。
ジャケットも以前のアレン自筆による、独特のイラストが全面には描かれず、片隅
にロゴがあるだけ。ジャケット内部もエフェクト処理された写真ばかりである。
Personnel:GONG BAND
- Daevid Allen (accoustic, glissando & led guitarply, vocals midwiery)
- Didier Malherbe aka Bloomdido bad de Grass (bass,tenor,alto,spprano saxes,WX7,keyboards,windsynthesizer,dogs,piccolo,flutes)
- Pip Pyle (drums, ten green bottles, scream)
- Graham Clark aka albert(no parking) parkin (violin, voices)
- Shyamal Maitra aka Banana Ananda (tablas,ghatam,djembe,darbuka,techno percs,programming,drums on 13)
- Keith Bailey aka Keith Missile Bass (bass guitar, vocals on 2 & 9)
GUEST:
- Charlelie Couture (vocals , text on 12)
- Tom The Poet (instant radio poetry during US tour with daevid on 13)
- Alain "Loy" Ehrlich (keyboards on 8, kora on 5)
- Mark Robson (keyboards, sportin vocals on 22)
Produced by Nigel Gilroy & Dino Watkyn
Recorded at studio davort, Paris between sept.91 & Juli.92
- Gnomerique Allen
紛れもない、あのゴング・イントロである。が、非常に短い。
- Shapeshifter Allen/Malherbe
ゴング・イントロがすぐに終わり、その新バージョンかと思わせるようにつながって
いる短い留守電メッセージでタイトル曲が始まる。デジタル・サンプリングされた
パーカッション音にて導かれ、雰囲気的には、初期の"You Can't Kill Me"などを想起
させるが、さすがに音が良いせいか、非常にcoolである。Graham Clarkのバイオ
リン・ソロ、自転車のベル、途中6/8拍子に転ずるあたりのスペース風味も束の間、
曲は終ってしまう。ただしアレンの声だけは昔から変わらない。
- Hymnalayas Allen/Bailey
なかなかポップな曲。
途中からMalherbeのソプラノ・サックスのソロに入るあたり、かなり軽快な疾走感ある
演奏で、タイトル通りヒマラヤ山脈上空を飛行するようなトリップ感があるが、
スペイシーではなく非常に土着的である。
- Dog-O-Matic Watkyn/Maitra
テクノ・ゴング。従来のゴングでは考えられないことであるが、これがなかなかゴング
的なのである。確かにゴングはテクノやアンビエントなリミックスの素材として面白い
ものである。トリップ感高め。
- Spirit With Me Allen/Ehrlich
かと思えばいきなり、地球に落ちるわけだ。ハープをバックに歌われるシンプルな曲。
- Mr.Albert Parkin Clark
登場人物紹介的短い語り。
- Raindrop Tablas Maitra
アルバム中何度も登場する、名手Maitraによるデジタル処理されたタブラ演奏。
このあたりにかなり’70年代的オブジェクトの
’90年代的扱いという意図が汲み取られる。
- Give My Mother A Soul Call Yogananda
ドローン風のサウンドに載り、哀愁を帯びたバイオリンが雰囲気を出している
物悲しい歌。アレンの声にフェイズ・エフェクトがかかっている。
- Heaven's Gate Allen/Bailey
マレルブの自由奔放なアルト・ソロ、印象的なギターリフ、そしてラップ風のアレン
の歌が交互に組み合わされた曲。
- Snake Tablas Maitra
再びエフェクト処理による短いタブラ演奏。
- Loli Allen/Clark
"Magick Brother"、あるいはアレンのソロに入っていそうな感じの、美しく優しい
フォーク調の歌。
- La Bas La Bas Couture/Allen
カントリー風ののどかでコミカルな歌にフランス語の語りがオーバーラップする。
この曲、"Invisible Opera Company Of Tibet"に入っている"Away Away"と同じ曲
である。手を抜きましたね、アレンさん!
- I Gotta Donkey Allen
もう1曲コミカルな歌。
- Can You : You Can Malherbe
"SHAMAL"あたりの曲を思い出させるようなジャズっぽいバイオリン・ソロが満喫で
きる。92年フランスでのライブ演奏。このあたりは個人的に好み。
- Confiture de Rhubarbier Pyle
ゴングにはめずらしい、キング・クリムゾン風インプロヴィゼイション。
- Parkin Triumphant Clark
わずか6秒の語りとその呼応。
- Longhaired Tablas Maitra
Maitraのタブラの弾き語り(?)ゴングメゾン中にも似たようなソロが入っている。
- Elephant La Tete Malherbe/Maitra
タブラとシャナイ(実際はウィンド・シンセと思われる)とのシンクロが心地よい。
バックにはタンブーラ、これにバイオリンが絡むので、完全にインド音楽である。
- Mother's Gone
Allen
引き続いてアレンの弾き語り。
- Elephant La Cuisse Malherbe/Clark
更に続いてジャズ・ロックなリズムに乗って、Clarkのバイオリンのインプロ、
キーボードによるブラス音が加わり、分厚いユニゾンでエンディング。
- White Doves Viraj/Sunsinger
Loliと同様、アレンの弾き語りで始まる美しい曲。
まったりと絡むバイオリンとビートルズ風のコーラスもおいしい。
- Gnomoutro Allen
最後に短く、あのゴング・イントロ"Radio Gnome"でアルバムは終る。
ちなみに米国盤で、上記正規盤から2曲(12、13)抜いて旧作のライブ
録音を追加した"SHAPESHIFTER+"(VICEROY VIC8039-2)1996と
言うのも出ている。+されたライブ録音は、"Goddes Invocation/Om Riff"
(12:58)で、録音年代は不明だが、クレジットによれば、
ギターがSteffi Sharpstrings、シンセサイザーにTwinkが参加していることから、
Live On TV (1990)あたりの音源
と思われる。要確認!!!!
ZERO TO INFINITY/GONG(2000)
(GAS SMACD 824)
新千年期を記念するかのように待望のアルバムが発表された。タイトルも「ゼロから無限へ」。
そう、いかにもあの「見えない電波の精」の続編である!
GONG奇跡の復活"Shapeshifter"から8年を経て新作がリリースされた。ああ、あれからもう8年も
経っているんだね。といっても25周年記念パーティーとか、これまた奇跡の来日公演とか、
いろいろありましたので、そんなに年月の隔たりを感じませんけど。
で、西暦2000年を待つかのように出された訳ですが、タイトルも2000との因果関係をそそる感じの、
「02∞」と数字と記号のみでも表示できる。「ゼロから無限」とは、ひょっとして・・・
その通り、ゼロとはあの英雄ゼロのことで、
'70年代の「見えない電波の精/Radio Gnome Invisible」のパート5なのだ。つまり前作"Shapeshifter"は
やはりパート4だったことになる。(でも前作にはGilliが参加してなかったし、前作をパート4と呼ぶのは、
ちょっとコジツケの感もあるんですが。)
そして物語は今後さらに続いていくのか、あるいはここで無限まで
行ってしまったってことは、これで完結編なのかもしれないが、いずれにしても今のところ謎である。
でわ、新ゴングバンドのメンバー、参加ミュージシャンを見てみよう。
- Didier Malherbe (Bloomdido Bad de Grass):Doudouk,Alto Sax,Bamboo Flute
- Theo Travis (Theodophilus Acidopholus):Tenor&Soprano Saxes,Flute,Keyboards,Electronic Samples
- Chris Taylor (Professor Paradox):Drums,Percussion
- Mike Howlett (Lorde Tonsil of Aplomb):Bass Guitar
- Gilli Smyth (Shakti Yoni):Voicewhisper,horsewhisper & birdsong
- Daevid Allen (Sri Capuccino Longfellow):Glissando & Lead Guitar,Singing,Piano
Guest:
- Mark Robso :Guest Vocal & Keyboards on #5
- Toby Robinson :Engineering & moat Studio Boss
- David Id & Venux de Luxe :Live Touring Engineers
さあ、どうです。このメンバーならゴングと呼んで異議ないでしょう。だって僕らのアイドル、ジリがまた参加してるん
ですもの。それにマイク・ハウレットも戻ってきたしね。ドラムは来日でもめたせいもあってか、新たなメンバーを起用していたり、ツイン管楽器でテオ・トラヴィスが加入している。(一応Didier Malherbeは参加しているものの、3曲目までで、残りのサックスとフルートのパートは全てテオが演奏しており、Didierの影が薄いのがちょっと気がかりですけど。)
そして、今回も新メンバーには何やら堅苦しそうな別称が与えられている。あれれデーヴィド・アレンはスリ・カプチーノ・ロングフェローなんだって。いいねえ、いくつも名前があって・・・。このアルバムではSharpstrings氏が参加していない。
よってギターのパートはグリッサンドも含め、デーヴィッドが弾いている、てえのも今までのゴングのアルバムではなかったことでわ?
さて、肝心な音の方はというと、これがまたGONGらしい楽曲が満載なのだ。前作では正直言ってアルバム全体的に、
ちょっと方向性が違うのでは、といった感じがしたが、今回はばっちりゴングの音なので安心してください。
特に随所に過去の楽曲からのフレーズの引用(それほどあからさまではない)などが見られるのは、
「見えない電波の精」シリーズのサウンド的統一感を狙っているのでしょうか?では、
レコードに針をぢゃなかった、CDに光を落として見ませう。
- Foolefare/馬鹿ファーレ(Allen/Travis)
サックスのアンサンブルによる短いイントロダクション。このアルバム・バージョンではインストであるが、
ライブにおいては歌入りで演奏される。
- Magdalene/マグダ連(Malherbe/Allen/Howlett/Taylor)
Didier MalherbeのDoudouk(アルメニアのオーボエに似た民族楽器)によるほとんどブレスレスのイントロにて
導かれる不思議な風味の曲。さらに中間部ではグリッサンドギターのバッキングで浮遊感のある空間のなかで
Doudoukのソロがテオのテナーサックスと絡んで聴かれ、このミスマッチが逆に不可思議な音世界をかもし出している。
マグダレーンとは新登場の女神の名前か。
- The Invisible Temple/不可視寺(Howlett/Smyth/Travis/Taylor/Malherbe)
ここでGilliの登場だ。Didierによる幽玄なる竹フルートをバックに、全部で11分以上に渡る詩の朗読。
ソロ部分を区切りに歌詞は3つのパートに分かれているが、楽曲的には"Isle Of Everywher(〜You)" の
逆コード進行(短3度下降)のループである。それにしてもDidierの情感こもったアルトサックスソロ、Theoの
しっかりとジャズしたテナーサックスソロに比べ、アレンのギターソロはかなりヤバイぞ!
- Zeroid零異度 (Allen/Howlett/Smyth)
ついにゼロが仮想的な存在となってしまうというアルバム中でも重要な曲。ヴォーカルもサンプリングしたものを
用いるなど凝っている。随所のブレークポイントで正に0dBとなるのは意図的?
緊張感のあるギター・リフとサックス・フレーズのからみ、全体的構成の様式美のなさ、そして
7拍子、11拍子、6拍子と自在の変拍子などは
往年の代表曲"Dynamite:I Am Your Animal"や"You Can't Kill Me"等の作風を継承している。
ここでのギターソロもアウトしまくっている。
- Wiseman In Your Heart心の賢者 (Allen/Howlett/Moerlen)
この曲はデーヴィッド・アレンのソロ、"Good Morning!"に収録されていた古い曲のリメーク
であり、"Daevid Allen and The Magick Brothers Live at the Witchwood 1991"でも演奏されている曲。
オリジナルやマジブラのライブ盤では全体にマリンバが入るパーカッシヴなアレンジとなっていた
(ピエール・モエルランも作曲者になっている)が、ここでは非常にクールなレゲエ風に仕上がって
おり、意図的かどうかわからないが、ソプラノサックスによる間奏が
スティングの"Englishman In New York"を想起させる。ベースとヴォーカルにマジック・ブラザーズの
マーク・ロブソンがゲスト参加している。
- Mad Monk 発狂僧侶 (Allen/Travis/Howlett/Taylor)
デーヴィッド・アレン自ら弾くピアノの不協和音フレーズを聴けば判るとおり、偉大なるジャズ・コンポーザー
であるセロニアス・モンクに捧げた曲だと考えられる。モンクの既成概念に捉われない自由な発想と表現に
デーヴィッド・アレンも若き日に何らかの影響を受けたのであろう。サックスのリフには、
"A P.H.P's Advice〜YOU"の引用が見られる。
- Yoni On Mars 火星のヨニ (Travis/Smyth)
デーヴィッドのグリッサンド・ギターとジリの詩の朗読。
本アルバム中の随所に使用されているが、テルミン(クレジットによればテオによる
サンプリングらしい)によるフレーズが一昔前風の宇宙感を演出している。
テオの極めてJazzyなソプラノ・サックスが聴ける。こちらは宇宙というより都会を
感じさせる。
- Damaged Man 傷を負った男 (Travis/Allen/Howlett/Taylor)
繰り返される戦争の無益の殺戮に対する嘆きがマイナー調の悲しげなフルートと絡んで
歌われる物憂げな曲。後半はクロスフェードにより、完全なるフリージャズ(これがまた
かっこいい)と化すシリアス
な曲。電話のベルで次曲につながっている。
- Bodilingus 肉体会話 (Travis/Allen/Howlett/Taylor)
落ち込んだ気持ちを取り直して、受話器を取ると、何と肉体が(仮想の)自分に話し掛けて
いるのであった。という、映画マトリックスの1シーンみたいな内容の歌。歌詞にも
ダウンロードとかウェブサイトなんていう最新情報技術用語(笑)が使用されている。
- Tali's Song タリの歌 (Allen)
この曲はクレヂットでは1980年の作となっている。Taliとはデーヴィド・アレンの息子、
Taliesinのことで、他にOrlandやTasmin、Anandaという4人の子供達への思いをhis father
という第三人称にて間接的に歌っている。非常に私的なメッセージソングである。
- Infinitea 永久茶 (Allen/Howlett/Travis/Taylor/Smyth)
最終トラックはグリッサンド・ギターのバッキングにテオのテナーサックスとジリの
スペースウィスパーが浮遊するスペイシーなナンバーで、フェードアウトにより永遠性の
表現をいっそう醸し出している。
注意)邦題は私、予知夢が勝手に付けたものです。
Radio Gnome in Japan
Copyright(C)1997 by Yochim
Last modified on May.10,2001